2023年、多くのファンに惜しまれつつ生産を終了したAudi TT。あのミニマルで研ぎ澄まされたフォルムが、ストリートから消えることはなかった。そして今、Audiは我々に最高の回答を用意した。次世代EVスポーツ、コードネーム「Concept C(C-Sport)」の生産確定だ。しかも、そこにはAudiの並々ならぬ「覚悟」が宿っている。
目次
伝説の「TT」再始動。Audiが放つ次世代EVスポーツの実像
Audi TTは、常に時代の一歩先を行く存在だった。バウハウス的な美学を纏った初代から、高い走行性能を誇った3代目まで、TTは「スタイルと走りの融合」を体現してきた。
今回、Audiのゲルノート・デルナーCEOが従業員に宛てた手紙の中で、このTTの後継となるEVスポーツカーの生産を正式に認めた。2027年の生産開始を目指し、開発は最終段階へと突き進んでいる。これは、ガソリンの匂いを愛する保守的な層をも黙らせる、圧倒的なパフォーマンスを伴った復活劇になる。
「ポルシェがどうあれ、我々は作る」CEOが放った不退転の決意
このニュースの最も衝撃的な点は、Audiの「自立心」にある。本来、このEVスポーツはポルシェの次期718ボクスター/ケイマンEVとプラットフォームを共有して開発されている。
しかし、現在ポルシェはEV市場の減速や財務的な懸念から、718 EVの計画を保留、あるいは中止するのではないかという噂が絶えない。これに対し、AudiのデルナーCEOは明確に言い放った。「ポルシェがどのような判断を下そうと、我々には関係ない。このプラットフォームの供給は揺るぎないものであり、我々は自分たちのスポーツカーを形にする」。
この強気な姿勢こそ、かつて「クワトロ」で世界を驚かせたAudiのスピリットそのものだ。パートナーの動向に左右されず、自らの信念を貫く。この「個」の強さこそが、ストリートで愛される車の絶対条件だ。
ポルシェと共有する「究極のプラットフォーム」の正体
「C-Sport」に採用されるプラットフォームは、EVスポーツ専用に設計されたものだ。通常のEVは床下にバッテリーを敷き詰めるが、このプラットフォームはバッテリーを「ミッドシップ」の位置、つまり座席の後ろに配置することを可能にする。
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低重心と理想的な重量配分: まるでMR(ミッドシップエンジン・リアドライブ)のスーパーカーのようなハンドリングを実現する。
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ダイレクトなレスポンス: エンジン音の代わりに、瞬時に立ち上がる強烈なトルクがドライバーを襲う。
Ski Beatzが作るビートが正確なリズムで心拍を上げるように、このEVスポーツの挙動はドライバーの神経と直結する。
デザインの力。ストリートを支配する「Concept C」の美学
昨年公開された「Concept C」は、TTとR8のDNAを掛け合わせたような、極めて攻撃的でミニマルなルックスをしていた。無駄を一切排除したラインは、まさに現代のグラフィティアートや建築物と共鳴する。
Audiはこのモデルを、かつてのTTのように「手の届くスポーツカー」として、あるいはR8に近い「ハイエンドなアイコン」として、絶妙なポジションに置こうとしている。ストリートにおいて、何にも似ていないそのシルエットは、所有者のアイデンティティを鮮烈に主張するはずだ。

日本での懸念:EVは「官能的なガソリン車」に勝てるのか?
ここで、日本の読者が抱く「EVへのアレルギー」に触れなければならない。
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サウンドの欠如: 5気筒ターボ(TT RS)の咆哮を知る者にとって、電気モーターの唸りはあまりに寂しい。
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重量の壁: バッテリーによる車重増加は、TTの生命線である「軽快なハンドリング」を殺さないか。
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インフラの不安: 日本の都市部や山道での充電環境は、未だ発展途上だ。
だが、Audiはこれらを「ソフトウェア」と「新構造」で解決しようとしている。疑似的な変速ショックや、スピーカーではない「車両の振動」を用いたサウンド・シミュレーションの実装だ。彼らはEVを単なる移動手段ではなく、デジタル世代の「楽器」へと昇華させようとしている。
「重い・遅い・無音」を覆す、ミッドシップ・バッテリー構造
「C-Sport」に採用されるプラットフォームは、EVスポーツ専用だ。通常のEVは床下に重いバッテリーを敷き詰めるが、このモデルはバッテリーを座席の後ろ、つまり「ミッドシップ」の位置に配置する。
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理想の重量配分: まるでMR(ミッドシップエンジン)車のような、ノーズの軽さと異次元の旋回性能。
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低重心の極致: エンジン車では物理的に不可能なレベルまで重心を下げ、路面に吸い付く走りを実現する。
Review
結論として、Audi TTの復活は、EV時代の到来を「妥協」ではなく「進化」として捉えるための狼煙だ。
ポルシェが迷いを見せる中で、Audiが真っ先に「やる」と決めた意味は大きい。2027年、この車がストリートに現れた時、我々は再びTTがもたらしたあの衝撃、あの「TT Moment」の再来を目撃することになる。
ただ日本でのEV市場は需要はまだ課題が多く、日本の特殊な気象条件や地理的要因、そして世界最強とも言えるハイブリッド車(HEV)の存在は、EV普及における高い壁となっている。
またセカンドカーとしてであれば、やはり走りの楽しさを追求すると、ガソリン車の選択するユーザーも多いのではないか。
今後のスポーツカーの未来は、日本とEUは異なるトレンドになる事も予想される。
引用元
本記事は、以下の情報を基に構成されています。
Car and Driver: “Audi Will Build the Concept C, Even If Porsche Cancels the 718 EV” (February 17, 2026)