ヒップホップの歴史において「王」と呼ばれる存在は数多いが、「ストーリーテリングの王」と言えばスリック・リック(Slick Rick)をおいて他にいない。その彼が、2025年9月、俳優・DJ・ラッパーとして多才な才能を発揮するイドリス・エルバ(Idris Elba)とタッグを組み、新曲**「Badman Generation」**をドロップした。
このコラボレーションは、単なる話題作りではない。大西洋を越え、世代を超え、ヒップホップが持つ「語りの芸術」を現代のビートで再定義する歴史的な邂逅(かいこう)だ。
目次
王の帰還。スリック・リック × イドリス・エルバが放つ「Badman Generation」の衝撃
2025年9月20日に公開された「Badman Generation」は、イントロが鳴った瞬間に聴き手を別世界へ引きずり込む。スリック・リックの最大の特徴である、あの滑らかで、かつウィットに富んだデリバリーは、還暦を過ぎた今もなお一分の狂いもない。
イドリス・エルバが自身のレーベル「7Wallace」からリリースしたこの曲は、単なるゲスト出演のレベルを超えている。二人が共有する「ロンドン生まれのバックグラウンド」が、USヒップホップとは一線を画す独特の気品と重厚さを生み出しているのだ。
なぜ今、この二人が並び立つのか? UKとUSをつなぐ「血」と「音」
この二人の共通点は「イギリス」にある。スリック・リックはロンドンで生まれ、10代でニューヨークへ移住し、伝説となった。一方のイドリスもロンドン・ハックニーの出身だ。
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ストーリーテリングの創始者、スリック・リックの衰えないキレ 「Children’s Story」や「La Di Da Di」でヒップホップの語り口を確立したリック。新曲でもそのスキルは健在だ。複雑な韻を踏みながらも、まるで隣で物語を聞かされているかのような親密さを保つ。そのフローは、流行り廃りの激しい現代のトレンドに対する「正解」を突きつけている。
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DJ/ラッパーとしてのイドリス・エルバの真価 映画『マイティ・ソー』や『刑事ジョン・ルーサー』での活躍が目立つイドリスだが、音楽への情熱は本物だ。彼はアフロビーツやハウス、ドリルに深く精通しており、自らのバースでは骨太で威厳のあるフローを披露する。リックへの深い敬意を抱きつつ、対等な「Badman」としてマイクを握る姿は圧巻だ。
楽曲解説:現代的なヘヴィ・ビートと「オールドスクール・フロー」の化学反応
「Badman Generation」のトラックは、現代のロンドンを感じさせる。
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アフロ・フュージョンとUKドリルのエッセンス 重低音の効いた808ベースに、アフロ・フュージョンのリズムが絡み合う。この複雑なビートの上を、スリック・リックのレイドバックした(少し後ろに溜める)フローが滑っていく様子は、まさに「新旧の完璧な融合」だ。リックのクラシックなスタイルが、最先端のサウンドスケープにおいても全く古臭く聞こえない事事実は、彼の芸術性が時代を超越している何よりの証拠である。
レジェンドが示す「Badman」の新たな定義。暴力ではなく「知性とスタイル」
タイトルの「Badman」とは、ストリートのタフな男を指す言葉だが、この曲において二人はその定義を書き換えている。
彼らが提示するのは、無意味な暴力や虚勢ではない。**「経験、知性、そして揺るぎないスタイル」**こそが、真のBadmanの条件であると説く。豪華なジュエリーに身を包みながらも、その言葉には人生の重みが宿る。若手ラッパーたちが「誰が一番凶悪か」を競う中で、リックとイドリスは「誰が一番エレガントに生き抜くか」を背中で語っているのだ。
世代を超えたマスターピース。我々は今、再びスリック・リックを聴くべきだ
「Badman Generation」は、2020年代のヒップホップにおける重要なマイルストーンとなるだろう。
スリック・リックという生ける伝説が、現代のシーンと接続されたことは喜ばしい。そして、イドリス・エルバという媒介者がいたからこそ、この魔法のようなケミストリーは実現した。この曲を聴くことは、ヒップホップの歴史を学び、同時にその輝かしい未来を体感することと同義である。
Review
スリック・リックの声は、もはや楽器としての芸術品だ。イドリス・エルバのプロデュース能力も高く、UKのダークな空気感とリックの華やかさが絶妙なコントラストを描いている。新旧のファン双方が納得できる、数少ない「本物のコラボ」だと言える。
引用元:https://thesource.com/2025/09/20/slick-rick-and-idris-elba-drop-new-single-badman-generation/







